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過去の小説を載せていきつつ、新たに小説も書いていきたいと思っています。更新ペースはきまぐれです。 ジャンルは恋愛、青春。日常に非現実的なことがちょっと起こったりとかが大好きです。
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  真っ暗な部屋の中、静かに膝を抱えて座り込む。
「私は、最低だ。・・・だけど、どうして皆同じことを言うの。」
そう呟いてから、膝に顔を埋める。
「真面目って言葉、大嫌い。」
だけど結局、周囲と上手く折り合いを付けられないのは自分自身のせいなんだろう。
周囲に心を開きたくない。自分は周囲とは違う次元に生きている。
・・・そう考えつつも、周囲が自分のことをいつか理解してくれることを何処かで期待している。
そんな馬鹿げた思考を持っているから尚更苦しむことになるのだ。
・・・正直、一番子供なのは自分だ。しかし、その事実を分かっていても認めたくない。
田中さんに当たってしまったのは、きっと彼女からにじみ出る優しさに甘えてしまったから。
・・・私は最低だ。
また涙が零れそうになる。それをぐっと堪えようとするが、やはり駄目だった。
「く、うっ、・・・うぅっ・・・!」
こんな自分が嫌いでならない。変えようにも、どうしたら良いのか分からない。
どうしたって素直になれない。

ふと、静かな足音が自分の部屋に向かってきていることに気付く。
気配をあまり感じさせない、人のものとは少し違った足音。
それから間もなく、部屋の扉が開けられた。

かちゃ。

その足音は私の正面に来ると静まった。
温度の無い手が、優しく私の頬に触れる。
誰の手かは決まっていた。ここには私とシー以外いないのだから。
「顔、上げて。」
抑揚のない声が、静かに言う。
彼の優しさ、いや・・・『私を元気づけるために合理的な行動』と分かりつつ、甘えてしまう。
今もこうして、ずっと彼が来てくれることを待っていたのだから。
「莉子、元気だして。」
私はゆっくりと顔を上げ、正面を見る。
すると、真っすぐにシーと目が合った。
・・・彼の目は綺麗だ。エメラルドグリーンに光る、宝石のような目。
あまりの美しさに、吸い込まれてしまいそうになる。
その目のせいなのか、シーの行動のお陰なのかは分からないが
不思議と心が落ち着きを取り戻していく。
「よかった。」
私の様子を見てシーは微かに笑ったかと思うと、すぐさま立ちあがって部屋を出て行こうとする。
・・・本当に、役割を満たしたと判断すればすぐに次の作業に移ってしまうのだから。
少しムっとしながらも、寂しさを感じた私は彼の手を掴んで引きとめた。
「あ・・の、・・・。」
シーは再びしゃがんで目線を私に合わせると、黙ったままその場に座り込んだ。
・・・どうやら、まだここに居てくれるらしい。
「それも、私を元気にしてくれる・・・為の、合理的な対応なんだよね。
・・・それでも・・・あ、有難う。」
暫くの沈黙の後、私は中空をぼんやりと見つめながら口を開いた。
「あの、ね。私今日ね・・・、最低なことしちゃったんだ。
同じクラスの田中雪子って子、彼女から折角私に心を開こうとしてきてくれたのに、
私ときたらそれを跳ね除けてさ。その上、酷いことをしちゃったの。」
シーはゆっくりとこちらを向き、目を見てくる。
しかし、その表情からは何も読み取れなかった。
・・・彼はアンドロイドなのだから、こうしている今もきっと無心でしかないのだろうが。
それでも、私は続けた。
「本当はね・・・、真面目とか凄いとか、言われたくない。・・・辛いの。
本当の私は、ちっとも真面目なんかじゃないし、凄くもない。
普段から頑張っていれば、きっとお父さんもお母さんも私を大切にしてくれる。
仕事よりも、私を・・・。だ、だから、」
途中で涙があふれ出てくる。
嗚咽が混ざり、上手く話しが続けられなくなる。
それでも、シーはただ静かに私の目を見つめ続けていた。
「うっ、うぅ・・・。だから、だから頑張って来たんだけど、いつまでたっても、何も変わらなくて。どうしてなんだろう。可笑しな話だよね。 っぅく・・・、別に好きで勉強なんかしてるんじゃないのに・・・。 」
彼は微動だにしない。彼の頭にある回路は、今どんな動きをしているのだろうか。

「私、もう頑張りたくない・・・」
最後にぽつりと、呟いた。

・・・途端、体が優しく包まれる。
頭が状況を理解するのに暫し時間を要した。 背中にはシーの腕が回されており、頬には、彼の柔らかな髪が触れている。
そうして漸く理解した。・・・私は今、シーに抱きしめられているのだ。

「もう、・・・頑張らなくても、良いよ。」

シーは方事になりつつ言い、私の髪をそっと撫でた。
彼に体温は無く、温もりもない。
・・・けれども、その一言で私の胸は次第に温かさを取り戻していく。
嬉しさと恥ずかしさとが同時に押し寄せてきて、私は思わず頬を赤らめてしまった。

・・・しかし私の心は本当に後ろ向きなもので、こんな折にふと疑問が浮かんでしまう。
『勉強を頑張らなくても良い』と言ってしまうことは、彼の役割に反してしまうのではないか?
ということだ。
恐らく私の両親はシーの役割として、『勉強の監視』という情報もインプットしている筈である。
なぜなら私の親は共に高学歴で、
過去には「勉強さえしていれば最後にその知識が自分を助けてくれる」などと散々言い、
小学校に入学した頃から毎日少なくとも3時間の勉強をさせてきた。
そして私は、逆らうことなくこれまでずっと勉強は欠かさなかった。
(褒めてもらいたかった。大切にしてもらいたかった。ただそれだけのために。)
ーそう考えると、今回のシー行動は彼の役割に対し大いに反することになってしまう。

「・・・シー?」
私はシーから体を離し、彼の顔を見てみた。
「・・・・。」
困った表情だろうか、苦しそうにも見える。
やはり、自身の行動原理を欺こうとしているからだろうか?
「ごめん、シー・・・。私、さっきのはただの弱音だから。
まだまだ、頑張れるよ。」
髪を撫でていた彼の手が、私の頬に添えられる。
「莉子が思うようにするのが、・・・良いよ。
それに莉子、もう一つ釈然としてないことがある、ように見える。」
シーに心の内をつつかれ、驚きのあまりに沈黙してしまう。
そんな私の様子を見つつも、彼は決して真剣な表情を崩そうとはしなかった。
私は複雑な心境のまま、胸の内を吐き出してみることにした。
「・・・うん。田中さんの、こと。このままにして明日を迎えたくない。」
その言葉を聞いたシーは立ち上がると、私に手を差し伸べた。
戸惑う私に、シーはただ「行こう。」とだけ言う。
・・・この手を取れば、きっと私は一歩前に進むことができるような気がする・・・が。

実を言うと、釈然としないもやもやの原因がこの他にも一つだけあった。
シーの行動原理だ。
彼は私の世話役を担っており、私の両親によってインプットされた『彼自身の役割』を
果たすのに合理的な手段を選んでいるというだけで、『私のために』とは違う。
彼は、アンドロイド。そういう機能しか持っていないのだから、当たり前だ。
「私のために」と思ってしまいたくなるが、期待したところで結局は落胆させられる。
今まで何度もそうだった。
そもそもアンドロイドに期待する自分がいけないのだが・・・。

・・・とはいえ、今はそんなことを気にしてはいる場合ではない。
結局のところ、まだ自立できていない私が生きて行くためには、彼に縋る他ないのである。

「・・・うん。」

私は複雑な心を胸の片隅に仕舞い込むと、ゆっくり彼の手を取った。
 



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過去に小説を書いていたので載せています。
最近また小説を書きたくなったので書いていますが、
書けなくて悪戦苦闘しています。
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